XがYに対して、Xの子どもが薬剤師として自立し、店を開くとき返すことを約して、借家甲の賃貸借契約を結んだ。数年たち、Xの子どもが自立したのでXはYに対して返還請求をしたが、すでにYはそこでY株式会社を運営しており、YはXの返還請求に応じなかった。
YがXの返還請求に応じなかったので、XはYに対して借家甲の返還請求の裁判を起こした。1回目の裁判でXとYは和解し、甲の返還を約した。
しかし、いつまでたってもYはXに甲を返還しなかった。
Yは、「甲はY個人が借りたのではなく、Y株式会社が借りたのだ。」と主張した。 |
以上をまとめるとこうなります。
子どもが店を開くとき返してね
X ――――――――――――――→ Y (実際にはY株式会社)
借家甲
YとY株式会社は別人格なのでYの主張は正しいといえます。
しかしこのときの場合だけ、YとY株式会社が別人格であると認めるにはあまりにもXにとって不利だということで、
「この事件についてのみ別人格として認めない」ということを法人格否認の法理といいます。
これからの裁判で頻繁に使われるようになるだろう法理です。